20歳の男の人から聞いたお話です。
赤ちゃんが眠い時、背中を「トン」「トン」てするじゃないですか。
~寝かせつけ時のことですか?~
そうです。
胸に抱っこされていているんだけれど、背中を「トン」「トン」てたたかれるんですよ。
それが嫌でした。
それで、母親なのにこんな嫌な事をするんだとずっと思っていたんです。
~ずっと。20年も覚えていたのですか~
嫌な事をされていたとなかなか言えないじゃないですか。
でも少し前、赤ちゃんを抱く機会があってはっきり思い出したので母親に聞いてみたんです。
「寝せられる時、叩かれて嫌だったんだ。お母さん俺が嫌な事してたんだよ。知ってた?」
~どうでしたか~
母乳で育てていたから、おっぱいを飲ませながら寝かせたよ。
私は、抱いてトントンはしていない。
子守を頼んだ時もあるから、実家のおばあちゃんが「トン」「トン」して眠らせてくれたんだね。
それきっと、おばあちゃんだよ。
~それを聞いていかがでしたか~
驚きました。ずっと母親だと思っていたことが違ったので。
そして、すぐに謝りましたよ。
「お母さんが嫌な事をする人だって、ずっと間違えて覚えていた。ごめんね」って。
~素直に謝れたのですね~
はい。
お母さんも今、謝られてもみたいな感じで恥ずかしいのかな。
「あなたはいいやつだね」って言ってました。
「おばあちゃんも、あなたは大きな赤ちゃんだったのに寝るまで抱いてくれて大変だったと思うよ。
可愛がってくれていたのに、「嫌だった」だけで終わりにしてはいけない」と親子で話をしたそうです。
~赤ちゃんの勘違いでしたね~
いろいろな体験を通して、感じて考えている赤ちゃん。
でも、人生は始まったばかりです。
限られた世界での体験を理解する時、思い込みが勘違いになることもあるのです。
お互いの気持ちを素直に話し合える時、勘違いの出来事はかけがえのない思い出に代わってくれるのですね。