息子が二十歳の誕生日を過ぎたある日のことです。
こたつに入りながらお茶を飲んでいました。
「おれ。赤ちゃんだった時のこと思い出したんだよね。話してもいいかな。」
~えっ。そんなこと言わないで話して。教えて。~
「(ある時)眠れなくなったんだよね。眠れないから動こうと思ったんだけど体が動かないんだ。それで暇だったから、天井を見たらシミみたいなものがあって、それを見ていたんだ」
~それいつ頃の話?赤ちゃんの時の写真が階段わきに飾ってあるから今持ってくるね。~
「ああ。この頃だよ。」
指さしたのは、生まれて三週間に満たない頃の息子の写真。しっかりと目を開けこちらを見ています。
~授乳の後いつもならぐっすりと寝てくれるのに、何故か眠らないでグズグズとしていたから何が悪いのかと考えちゃった頃だよ。大変だったけど君も分からなくて困っていたんだね。そうだったのか。~
里帰りしていた実家の部屋の天井は、木目の模様があります。後日それを確認し、赤ちゃんはけっこう目が見えているのだと思いました。
視能訓練士の方に確認したところ、生後三週間で視力は0.01ほどだそうです。経験から45日位で瞳が合うことを知っていましたが、その前にすでにいろいろな物を見て考えているのだと、息子から教えてもらいました。
生後三週間が過ぎ体がこちらの世界に慣れた頃から、脳や心を成長させるため眠れないようにプログラムされているように感じました。
赤ちゃんが眠らないで泣くことも、ぐずることも、悪いことではないのですね。赤ちゃんとお話するための一つの形のように思います。